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Linux OS開発環境構築マニュアル

2020年10月28日星期三
Linux
このブログ記事が廃れたです。BSP 5用のご参考ください

Linux

本マニュアルについて

本マニュアルはトラデックスのCPUモジュール上で動作するLinux OSの開発環境構築およびOSイメージの作成をする手順を記述しています。

参考:

本マニュアルのPDFダウンロード

1.実行環境

本マニュアルの実行環境は下記です。

仮想化ソフト:VMWARE Player v15.5.6
Host OS: Windows 10 1909
Guest OS: Ubuntu Desktop 18.04LTS 64bit(英語版)
BSP:v3.0.4
CPUモジュール:Colibri-iMX7D 512MB V1.1C
キャリアボード:Colibri 評価ボードRev 3.2A+ アクセサリーキット

本マニュアルとは異なるモジュールや評価ボード以外のキャリアボードを使われても大雑把には同じ操作となります。
BSPやGuest OSのバージョンが異なると本マニュアルの操作と異なる可能性があります。

インターネット接続環境が必要になります。

・VMWAREの設定について
下記のような設定を推奨いたします。
 CPUコア数割り当てられる最大値
 メモリー4GB以上
 HDD300GB以上

・パソコンのスペックについて
SDカードスロットが必要です。本開発ではパソコンのスペックをかなり要求されます。コンパイルに数時間要するのでできるだけ開発効率を上げるために高性能なパソコンを使用することを推奨いたします。参考まで下記パソコンのスペックでコンパイルに4時間ほどかかります。

CPU:3.2GHz 6コア(Hyper Threading)
メモリー:64GB
HDD:6TB

コンパイルは並列で行われますのでCPUの速度がコンパイル時間に影響します。上記のスペックではHDDやメモリーは十分ですが全CPUコアが使用率100%になることも多々あります。

2.事前準備

事前にVMWARE PlayerをインストールしUbuntuが動作する状態にしてください。本マニュアルではこれらがインストール済みの状態から始まります。インターネットに接続できるように設定も行ってください。

3.前提知識

本マニュアルは下記に理解がある方を前提としています。

・Ubuntuの基本的な操作
・VMWARE Playerの基本的な使い方
・CPUボードの大雑把な仕組み
・Linuxの大雑把な仕組み
・gitの使い方

4.注意事項

マニュアルで進めている内容はあくまで一例ですが同様の方法をとっていただくとトラブル発生時などにご質問にお答えしやすいです。

開発環境と実行環境の違いをわかりやすくするためにコマンドの表記の前に下記をつけています。
開発環境(PC)上で入力するコマンド:[ubuntu]$
実行環境(モジュール)上で入力するコマンド:[colibri-imx7]#

・仮想化ソフトについて
VMWAREなど仮想化ソフトを使用せずパソコンに直接Ubuntuをインストールされてもよいですが環境が壊れるなどのトラブルが発生する可能性もあります。VMWAREを使用すればイメージのバックアップを取ることでこのようなトラブルの回避が可能です。

・開発OSの選定について
特にUbuntu18.04でないと開発ができないわけではありませんがトラデックスのBSPと親和性が高く、開発情報が多い安定したものを選定しています。別のディストリビューションを使われると本マニュアルとは違う方法で進めないといけない可能性があります。
またトラブルが発生する可能性があります。言語は英語版を推奨します。(エラーメッセージやログなどが英語で出力されるため問題発生時にインターネットで情報を捜しやすいため。また日本語版を使うとIDEなどのGUIのレイアウトが崩れる場合があります。)

・インターネット接続環境について
トラデックスのLinux開発環境ではさまざまな(gitやftp,svnなど)プロトコルを使用します。通常、社内LANをご使用いただく場合、ファイヤーウォールやプロキシサーバなどを使用しているケースが多くこれらのプロトコルで通信できない可能性があります。
ファイヤーウォールなどの影響を受けないフリーな回線をご用意ください。

コピーについて
本マニュアル内のコマンドなどをコピーした場合、改行が入ったり「-」が抜けてしまうことがあるのでご注意ください。一度テキストエディタなどに張り付けてコピーした内容をご確認ください。

Open Embeddedについて

トラデックスのCPUモジュール上で動作するLinux OSは組み込み向けディストリビューション(Poky)であり、パソコンなどで動作するDebian系ディストリビューションなどと大きく異なります。例えばapt-getなどパッケージ管理ソフトで容易にパッケージのインストールを行うような仕組みがありません。(opkgは実質使用できない)また開発環境(x86系)と実行環境(ARM)が異なるためOSやミドルウェア、アプリケーションなどはすべてARM向けにソースコードからクロスコンパイルを行って作成する必要があります。
トラデックスの開発環境ではそれらの開発を容易にするためにOpen Embeddedという開発プラットフォームを使用します。
Open Embeddedは主にリソースが限られた組み込み機器に軽量なOSを搭載させるために用意された開発プラットフォームです。

CPUボードの開発をする場合、目的のアプリケーション向けに必要なCPUの速度やメモリ容量などハードウェアスペックを確認してデバイス選定を行いますがソフトウェア(主にOSとミドルウェア)も目的のアプリケーションを動かすための必要最小限のもの にしないと余計なリソースを奪われ性能が損なわれる可能性があります。

例えばトラデックス標準OSはX-WindowやPerlなどが搭載されていますがpythonやwebサーバ、QTなどは含まれていません。
CPUボードを使ってGUIを不要とするルーターを開発する場合、GUI機能は不要ですがさまざまな通信プロトコルやwebサーバなどの機能が要求されます。トラデックス標準OSではこのようなルーターを作ることはできません。
Open Embeddedではこのような要求される機能を丁度よく盛り込んだOSを容易に作成できるようになっています。

Open Embeddedの詳細に関しては下記をご参照ください。
http://docs.openembedded.org/usermanual/html/


開発の流れ

トラデックスのCPUモジュールのソフトウェア郡は主にブートローダー(U-Boot)、Linux OS、ファイルシステムで構成されています。
本マニュアルではそれら3つを含めたOSイメージの作成について記載しています。下記はOSイメージの開発の流れです。アプリケーションはファイルシステムに含まれます。



開発環境構築

Ubuntuのアップデートを行います。画面左下のダッシュボードをクリックして「update」と入力しSoftware Updaterを起動しアップデートを行います。アップグレード(OSバージョンのアップデート)の案内がある場合もありますがUbuntu18.04のバージョンのまま使用しますのでアップグレードはしないようにご注意ください。



Software Updaterと同じようにダッシュボードからTerminalを立ち上げます。以後Terminalでさまざまなコマンド入力します。コマンドを入力するのは場合はTerminalを立ち上げてください。

Open Embeddedの開発においてシェルにdashを使うとうまくいきません。またdashを使用しないといけないケースはありません。基本的にbashを使用すればよいため下記コマンドでdashからbashへ変更します。

[ubuntu]$sudo dpkg-reconfigure dash

下記のような画面が表示されますのでNoを選択します。



必要機能のインストールのため下記コマンドを実行します。

[ubuntu]$ sudo dpkg --add-architecture i386
[ubuntu]$ sudo apt-get -y update
[ubuntu]$ sudo apt-get -y install g++-5-multilib
[ubuntu]$ sudo apt-get -y install curl dosfstools gawk g++-multilib gcc-multilib lib32z1-dev libcrypto++6:i386 libcrypto++-de
v:i386 liblzo2-dev:i386 lzop libsdl1.2-dev libstdc++-5-dev:i386 libusb-1.0-0:i386 libusb-1.0-0-dev:i386 uuid-dev:i386 texinfo
chrpath
[ubuntu]$ sudo apt-get -y install git python libncurses5-dev


BSPの入手

トラデックスのBSP(Board Support Package)の内容はOpen EmbeddedのレシピになっていますのでBSP = Open Embedded のレシピをダウンロードとご認識ください。

BSPをダウンロードするためのrepoを入手します。
実行ディレクトリ作成

[ubuntu]$ mkdir ~/bin

repoのダウンロード

[ubuntu]$ curl http://commondatastorage.googleapis.com/git-repo-downloads/repo > ~/bin/repo

実行権限追加

[ubuntu]$ chmod a+x ~/bin/repo

一度Ubuntuを再起動します。再起動することでrepoコマンドが使用できるようになります。

[ubuntu]$ sudo mkdir /work

オーナーとグループを変更

[ubuntu]$ sudo chown  /work
[ubuntu]$ sudo chgrp /work
[ubuntu]$ cd /work

repoダウンロード用ディレクトリ作成

[ubuntu]$ mkdir bsp && cd bsp

repo(git)の設定メールアドレスと名前(ダミーで問題ありません。変更せず下記をそのまま実行してください。)

[ubuntu]$ git config --global user.email example@example.com
[ubuntu]$ git config --global user.name example

repo初期化

[ubuntu]$ repo init -u http://git.toradex.com/toradex-bsp-platform.git -b LinuxImage3.0 -m default.xml

repoを実行すると下記のような質問があるのでyを入力

[ubuntu]$ Enable color display in this user account (y/N)?

repo同期

[ubuntu]$ repo sync

エラーが出る場合、いったんすべて削除して

[ubuntu]$ rm -rf ./* && rm -rf ./.repo
[ubuntu]$ repo sync -j1

を試してください。並列のダウンロード数を1つにします。

Open Embedded用のディレクトリ作成&移動

cd /work
[ubuntu]$ mkdir oe-core && cd ./oe-core

BSPコピー(repoのディレクトリはそのまま置いておき最新版や古いバージョンを入手するときに再利用します。不要なら削除しても問題ありません。)

[ubuntu]$ cp -prf /work/bsp/* ./

BSP配下のファイルは下記のようになっています。
export :ビルド環境設定シェル
layers :Open Embeddedのレシピ

Open Embeddedの設定

/work/oe-core配下で下記を実行します。

Open Embeddedの環境設定

[ubuntu]$ . export

自動的にOpen Embeddedで使われるファイルの生成や環境変数の定義などがされ/work/oe-core/buildに移動します。

Open Embeddedの設定を変更
local.confファイルの内容を変更しま

[ubuntu]$ gedit ./conf/local.conf

・ターゲットモジュールの選択(必須)
MACHINE変数はモジュールの設定を行います。ファイル内に候補がいくつかあるのでコメントアウトをはずして目的の設定を行ってください。コメントアウトは#で行います。下記はcolibri-imx7の場合の設定です。ターゲットのモジュールにあわせて変更してください。

MACHINE ?= "colibri-imx7“

・i.MX系のGPUのライセンスへの同意(必須)
i.MX系のモジュールでGPUの機能を使用する場合、下記ファイルを参照の上ライセンスに同意しなければなりません。

/work/oe-core/layers/meta-freescale/EULA

同意できた場合、下記をlocal.conf内の任意の場所に追加します。

ACCEPT_FSL_EULA = "1"

・一時ファイルの削除設定(任意)
下記設定を消すとビルド途中の一時ファイルなどが削除されなくなります。容量は大幅に増えますが一時ファイルが必要になる場合は本設定を削除します。通常はこのままの設定で問題ありません。

INHERIT += “rm_work”

・ビルドヒストリーの書き込みをなくす(任意)
下記設定を追記するとビルドの最後に書き込まれるビルドヒストリーの書き込みを行いません。その分若干ビルドが早くなります。

INHERIT_remove = "buildhistory"

ビルドヒストリーは/work/oe-core/build/buildhistory/配下にできます。主にビルドで出力されたファイルリストや依存関係の情報などが出力されます。

・並列処理オプション
下記の設定を変更することによりbitbakeの並列タスク数を変更できます。
初期設定は下記のようになっていてCPUの数と同じ数になります。

BB_NUMBER_THREADS ?= "${@oe.utils.cpu_count()}"

bitbakeを並列で行うとエラーが発生する場合の原因の一つに並列タスクが原因の場合があります。
その場合1に設定してbitbakeを行うと正常にできる場合があります。

BB_NUMBER_THREADS = "1"

・並列make設定
makeで指定するプロセッサ数を指定します。
初期設定は下記のようになっていてCPUの数と同じ数になります。

PARALLEL_MAKE ?= "-j ${@oe.utils.cpu_count()}"

4つを指定する場合は下記のようになります。

PARALLEL_MAKE ?= "-j 4"

Open Embeddedのビルド

Open Embeddedのビルドを行うと大雑把に下記のような手順が実行されます。

do_fetch: ソースコードをダウンロード
do_unpack: ソースコードを解凍(展開)
do_patch: パッチを適用
do_configure: configureを実行
do_compile: makeを実行
do_install: make install を実行
do_populate_sysroot: sysroot にインストール
do_package: パッケージ化用のディレクトリにインストール
do_package_write: パッケージの作成(ipk, deb, rpm)
do_build: ビルド終了用のタスク
do_rm_work:一時ファイルの削除

ビルドに失敗する場合は最初のソースコードのダウンロードで失敗するケースがほとんどです。
ダウンロードにはgitやftpなど使用しています。ファイヤーウォールやプロキシの利用している場合ダウンロードエラーとなる場合があります。最初に下記コマンドですべてのファイルのダウンロードだけをしておきエラーが発生しないかを検証します。

[ubuntu]$ bitbake -runall fetch console-tdx-image

本コマンドでダウンロードエラーが出る場合はインターネット回線に何かしらの制限がかかっていると思われます。
ダウンロードが正常に終われば下記コマンドですべてのビルド作業を行います。

[ubuntu]$ bitbake console-tdx-image

パソコンのスペックにもよりますがビルドには数時間かかります。正常にビルドが終わると下記にOSイメージを作成するためのtarファイルが出力されます。(Colibri-iMX7の場合) バージョンや日付はコンパイル環境によります。

/work/oe-core/build/deploy/images/colibri-imx7/Colibri-iMX7_Console-Image-Tezi_<バージョン>-<日付>.tar

下記のようなメッセージが出るとビルド成功です。



無視してよいエラー

the basehash value changed fromというようなエラーが出るときがあります。これはレシピの修正などを行ったりするとOpen Embeddedの出力物のハッシュ値が変更されたときにでてきますが無視できるエラーです。出力物には影響ありません。
もし消したい場合は一度すべてのファイルを消して最初からbitbakeを行います。非常に時間がかかるため開発時には行わず開発が終わったときなど、最後のbitbakeで行うと効率的です。



OSイメージの書き込み

OSイメージ用ディレクトリ作成&移動

[ubuntu]$ mkdir /work/image && cd /work/image

作成したイメージを展開します。必ずroot権限で展開してください。

[ubuntu]$ sudo tar -xf /work/oe-core/build/deploy/images/colibri-imx7/Colibri-iMX7_Console-Image-Tezi_3.0b4.tar

以前に展開したものある場合すでにあるディレクトリを削除してから行ってください。

[ubuntu]$ sudo rm -rf ./Colibri-iMX7_Console-Image-Tezi_3.0b4

解凍したファイルはTEZIでモジュールに書き込みます。
書き込み方法はTEZIマニュアルをご参照ください。

出力されたファイルの説明

u-boot-nand.imx

ブートローダーのファイルです。

zImage

カーネルを圧縮したものです。

Console-Image-colibri-imx7.tar.xz

ルートファイルシステムを圧縮したものです。

imx7d-colibri-aster.dtb
imx7d-colibri-eval-v3.dtb
imx7d-colibri-iris.dtb
imx7d-colibri-iris-v2.dtb
imx7s-colibri-aster.dtb
imx7s-colibri-eval-v3.dtb
imx7s-colibri-iris.dtb
imx7s-colibri-iris-v2.dtb

キャリアボードやモジュール別のデバイスツリーファイルです。

上記以外のファイルはTEZIで使用するファイルです。

以上がOSイメージ開発の流れになります。本マニュアルではトラデックス標準のOSイメージを作成しましたが必要に応じてOSイメージのカスタムやアプリケーションの作成を行う必要があります。それらに関しては別途、対象のマニュアルをご参照ください。

Authors:
桐川篤史
・岡本無線電機
ガルシアアルバロ・Toradex(トラデックス)

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